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Re+g 「作りたいものを作る」 180人のデザイナーが作り出す、こだわりだらけの雑貨ブランド

Re+g 「作りたいものを作る」 180人のデザイナーが作り出す、こだわりだらけの雑貨ブランド2020.03.27

物作りをする人なら誰しもが共感しそうな「自らの創造性を活かしたオリジナル作品を作りたい」という想い。
それを起点に生まれた『Re+g(リプラグ)』という一風変わった雑貨ブランドがあります。その母体は広告制作などを手掛けるデザイン会社。

常日頃クライアントワークを生業とするデザイナーたちの「あったらいいな」を詰め込んだ、美しさと実用性を備えたアイテムの数々には、あなたの “そうぞう力”(創造力・想像力)を心地よく刺激する驚きとアイディアが満載。180名のデザイナーが徹底したこだわりをもとに試行錯誤した雑貨たちは、シンプルながらどこか温もりを感じさせる魅力に溢れ、使うシーンを想像する楽しみも提供してくれます。

今回は、そんな『Re+g』ブランドアートディレクター・永嶋邦子さん(以下、永嶋さん)と、セールスアシスタント・中村雪乃さん(以下、中村さん)をインタビュー。創業から約10年を迎えた独創的なブランドに纏わる物語を伺いました。

■はじまりは社員が自主制作したカレンダーから

–『Re+g』を立ち上げたそもそものきっかけを教えてください。

(永嶋さん)10年以上前のお話になりますが、うちの社員がある時、自主的にオリジナルのカレンダーを作り始めたんです。それを当時の社長に見せたら、「せっかく作ったんだからブランド作って商品として売ってみないか」という話になって、そこから話が進みました。
元々商品として売ろうという気はさらさらなかったですし、ブランドを作ると言われてもピンと来なかったですね。クライアントから受注してオーダー通りに制作するというのが我々の本業ですから。

–きっかけは自主制作のカレンダーなんですね! その後、社長のアイディアでブランドが立ち上がることになると。

(永嶋さん)はい。ですので完全に、デザイナーの「自分が思ったものを作りたい」という欲求に端を発しているんです(笑)。クライアントありきでデザインするものではなく、自分発信でデザインして作品を作ってみたいという。
実は当時私がいた部署でも、誰に言われたわけではなく、仕事の合間にチームのロゴやグッズを作ろうという動きがあって、オリジナルの手拭いを作ったんですよね。
10枚くらいしか作らなかったんですが、いざ作ってみたら嬉しくなってしまって社長にもプレゼントしちゃいました(笑)。先ほどの自主制作のカレンダーの話と同じような流れですよね。
当時、そういうことが同時多発的に色々なデザイナーの中で起こっていて、それがたまたま重なって本格化したというのが真相です。

–そこからブランド立ち上げまでは大変だったのでは?

(永嶋さん)社長の一声で決まったブランド化ですが、ブランド名やロゴ、コピーを決めるなど、やることはたくさんあるんですよね。初期メンバーは5人くらいで、私はそこにアートディレクターとして携わることになり今に至ります。
はじめは仕事の合間に行っていた小規模なもので、初年度はカレンダーやポストカードという最小限のラインナップでスタートしました。その時の社長は今の会長にあたるんですが、なぜいきなりブランドを立ち上げることになったのか、いまだにその真意はわからないんです(笑)。
ただ思うに、デザイナーが発信する場所みたいなものを作りたかったのではないかなと。会社を活性化するための策だったのかもしれません。

―それが大規模なものに発展して10年以上も続いているとはすごいですね。ちなみに『Re+g』の由来は?

(永嶋さん)「Re」は物事を再生するっていう意味合いで、「Plug」は差し込むものですよね。デザインの力で物事をつなぎ直す、そういう思いを込めて名付けました。

■審査員は全員デザイナー! シビア過ぎる社内コンペ

―『Re+g』ブランドの特徴やこだわりはどういったものですか?

(中村さん)180名のデザイナーが作っている、というのが大きな特徴ですね。社内の一事業ではありますが、誰で対しても門を開いていて、年1回行われる社内コンペには全社員がエントリー可能。そこで採用されたものが実際の商品になるという流れです。実は、私も過去に参加したことあるんですよ(笑)。

–ええ! そうなんですね。

(中村さん)惜しいところまでいったんですが、プレゼンして採用されたら製造ルートも自分たちで確保しないといけないと大変さがあり、私の場合はそのルートが見つからず断念せざるを得なかったんですね。

―そういう苦労もあるんですね。コンペで審査するのもデザイナーさんですか? 社内コンペとは言え、審査はすごく厳しそうですね。

(永嶋さん)御察しの通り、審査員は全員デザイナー。本当にシビアです(笑)。
180名のデザイナーも全て弊社常駐のデザイナーですし。作りたいものを作るって意外と難しいんですよ。
自分を含めですが、妥協を許したくない人間ばかりなので一筋縄ではいきません。商品へのこだわりもすごいです。

–具体的には、どういう部分にこだわっているんですか?

(中村さん)それぞれのデザイナーの個性を活かしたいというのが前提にあるので、作風についてはバラバラなんですが、アイテムが何であれブランドとしての統一感やクオリティ、そして素材には徹底的にこだわっていますね。

(永嶋さん)例えば、普通にメーカーがカレンダーを作る場合、いくつかの紙見本を眺めてその中からどの紙を使うか決めていくと思うんですが、うちの場合は膨大な素材の中から厳選しまくって選びます。
何でこの素材を選んだのか、その理由がはっきりしていないとダメなんです。
多分、作っている人しか分からないようなマニアックなこだわりポイントがあるんですよね(笑)。

―広告制作のプロということは、豊富な知識や経験、それに各種メーカーとの繋がりもたくさんありますよね。そんな方々がこだわり抜いたものだったら、間違いのないクオリティですよね。

(永嶋さん)コストの問題もあるし、本気で売りたいとかヒットさせたいと思っていたら、こんなことはできないでしょうね(笑)。いや、営業的に言えばもちろん儲かるに越したことはないんですが、質を落としてまでそうしたいという考えは全くないですね。

■想像を絶するビハインドストーリーが隠されたアイディア満載のカレンダー

–monolaで販売させて頂く商品をご紹介して頂けますか。

■「Re+g Triangular」

(永嶋さん)うちの定番人気のカレンダーです。卓上のわずかなスペースに収まり、3ヶ月間の暦を一度にチェックできるというのが特徴。弊社の会議室にも置いてあります。
3ヶ月くらい先のスケジュールを把握しないといけない業種、例えば美容院とか歯医者さんとか予約のために先のスケジュールをパッと確認する必要性のある職業の方に人気で、リピートが多いですね。
『Re+g』がスタートした時からある商品ですが、紙選びはもちろん、サイズ感、見やすさなど様々な試行錯誤がなされたものです。紙代もさることながら、シルク印刷(孔版をスクリーンとして印刷対象を覆い、孔からインクを付けて印刷する方法)を採用しているので、どうしてもコストが掛かってしまい、やや割高に感じる価格帯にはなってしまっています。

(中村さん)上代が高いってよく仰られるんですが、コストのことを考えると「すみません」というしかないですね(笑)。例えば、こちらの黒いカレンダーの場合、視認性にもこだわって敢えて二度刷りしていますし、制作当時に現存していた中で一番黒い紙と言われていた紙素材を使用しています。
ちなみに、限定カラーを毎年出しているんですが、今年はドイツから仕入れた朱色の紙を使用しています。
あまり流通していない貴重な素材なので、物理的に限定数が限られ、増刷できないという事情もあります。

■「お絵かきカレンダーAtelier mio(アトリエ ミオ)」

(中村さん)親子で楽しめる知育カレンダーです。
付属の絵の具を使って指で絵を描くことができるんですが、そのためのガイドが印刷されているんです。
このガイドから自由に想像して色を塗ったり絵を描いたりして1つの作品を完成、そしてカレンダーとして壁に飾ってもらうというのがこのカレンダーの使い方。
1年を通して12作品の絵が完成するというわけです。まっさらなキャンバスにお絵かきすることにハードルの高さを感じる子どもって少なくないんですよ。そのために紙をカラフルなものにしたり、創造欲を掻き立てるようなガイドラインを入れたりと、様々な工夫を凝らしています。
また、絵の具は「kitpas」というメーカーさんのもので、子供が口に入れても問題のない安心安全な顔料を使用しています。一般的な絵の具のように水も筆もいりませんし、ティッシュで簡単に拭きとれるのではみ出しても平気。準備や片付けの負担もありません。
ちなみに、こちらの6色は二社共同で開発したオリジナルカラーで、複数の色を混ぜて使うことも可能ですよ。

(中村さん)そしてこのカレンダー、実は「レッジョ・エミリア・アプローチ」というイタリアのアート教育の考え方を参考にして作られたものなんです。
誰かに教わるのではなく、子供が自分で考えて形にしていく。大人はそのためのアトリエを準備し、完成した作品を子供が見える位置に飾ること、というのが基本方針。これらを兼ね備えた理想的な商品ができたなと自負しています。

(永嶋さん)自分が作った作品を飾ってもらえるという体験自体が、“認められた”という成功体験や気持ちを生むんですよ。ですので、完成したらご自宅のよく見える位置に飾ってくださいとオススメしています。
例によってコストの関係で結構なお値段になっていますが、1年間かけて楽しみながら利用できるものと考えれば、ご納得して頂けるのではないかと思います。プレゼントにもオススメですね。
ちなみに、印刷もイタリアの会社で行なっていて、紙もイタリア製。現地との細かいやり取りやサンプル送付などの作業もあったので、商品完成までにかなり時間と労力を要しました。
想定していなかったトラブルも多発して、今だから笑ってお話できますが、完成したのは発売日ギリギリでした(笑)。

■glassine paper Calendar 2020 "satoyama"

(永嶋さん)半透明のグラシン紙という素材を使ったカレンダー。紙風船のような素材と言えば分かりやすいでしょうか。
暦の部分と絵の部分が二層に分かれているので、過ぎた月の紙はカットしてラッピングペーパーやブックカバーに二次使用して頂けます。カットした紙には暦が入らないようになっているので、絵柄だけを楽しんで頂けるというのが特徴ですね。暦の紙に書き込んでも大丈夫ですので、綺麗なカレンダーだからもったいないからと躊躇することもありません。
こちらも、グラシン紙に複数の色を重ねて印刷するのは難しいということで制作にあたっては苦労しました。
ようやく見つけた印刷会社さんにも技術面でかなりのご尽力を頂きました……。

なお、こちらは今年で5シリーズ目。奥行きを活かした絵作りと、ストーリー性を持たせるという部分は毎回こだわっています。
例えばこの絵のテーマは「渡り鳥との出会いと別れ」。
迷子になった鳥が少年と出会って仲良くなっていくんですが、渡り鳥なので最後には少年のもとを去っていってしまうというストーリーが隠されています。

–どれも並々ならぬ努力とこだわりが詰まっていて、何だか背筋が伸びる思いです……。なお、『Re+g』としてはカレンダー以外に文具やギフトなど、色々な商品を販売されていますよね。

(中村)実はその他にも、『Re+g(リプラグキッズ)』という子供の知育玩具の分野に特化した派生ブランドに注力しているんです。そして、その一発目の商品というのが、先ほど紹介した「Atelier mio」。
第二弾として、「CORO-PUTER.Ja(ころぴゅーた)」という商品を来春のリリースへ向けて開発している最中です。

–どんな商品なんですか?

(中村さん)ひらがなを楽しく学べるアプリ連動のおもちゃです。
アプリをダウンロードしたスマホをセットして、タグの埋め込まれたひらがなのパーツを転がす。
そうするとそのひらがながアプリに表示されるという、デジタルとアナログなおもちゃを組み合わせた学習用ツールですね。パンフレット写真は試作第二弾のものなんですが、展示会でも子供に大人気でした。
今は日本語学習に特化していますが、そのうち軌道に乗ったら英語学習バージョンも作っていきたいですね。
まだまだ先のお話になるとは思いますが(笑)。

(永嶋さん)本当は、「Atelier mio」より「ころぴゅーた」の方が先にスタートした商品なんです。
だけど、開発にかなりの時間が掛かってしまった結果、先にカレンダーの方をリリースする運びとなりました。

–今後は知育分野にも力を入れていくと。

(永嶋さん)少子化が進んでいく中で、子供への教育を重要視する声がさらに増えてくるでしょう。
子供1人の担う未来がどんどん大きく、負担のあるものになってくるわけですから。これまで大人向けの商品を作ってきた私たちですが、教育という分野でも役に立てることがあったらいいなと考えていて。
まあ、これもまた、商売に結びつくかという面で確固たる自信はないのですが(笑)、「こんなのあったら子供が喜んで勉強してくれそう」とか、そういった発想で今後も取り組んでいけたらと思っています。

(中村さん)何をしても根底は変わらないですよね、作りたいものを作るっていう(笑)。

All Photos by Youichi UeDA

ライタープロフィール
濱安紹子(はまやす しょうこ)
猫と布団をこよなく愛する、三足の草鞋ライター。
音楽メディア、WEB系広告代理店での勤務を経てカナダ・トロントへ。 現地の日系出版社にてライター業に携わった末、帰国後よりフリーランスライターとしてのキャリアをスタート。その傍らで自身の音楽活動、酒好きが高じてバー営業も行っている。

カメラマンプロフィール
Youichi UeDA
「セガ・エンタープライゼス、ソニー・コンピュータエンタテインメントで 14 年間サウンドプログラマとして活動。現在は KKBOX でデータベースエンジニアとして勤務。本業の傍ら 2017 年より写心撮影の業務を開始。ダンスのワークショップを中心に鋭意活動中!」https://www.flickr.com/photos/youichi_ueda/

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