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森陶器:徳島の文化を支えてきた伝統工芸品・大谷焼の窯元

徳島の文化を支えてきた伝統工芸品・大谷焼の窯元 森陶器2019.10.27

国の有形文化財に登録されている日本最大級の登り窯。そして、広大な敷地に敷き詰められた大甕。約240年の歴史を持つ大谷焼を製造する森陶器さんを訪れ、まず圧倒されたのはその景観でした。

徳島の特産である藍染め文化を古くから支えてきた大谷焼の藍甕。その藍甕や水甕などをはじめとする大きな甕を作る際、「寝ろくろ」(2人一組で1人が甕の成形し、1人が寝ころんで足で蹴りながらろくろを回す製法)という大谷焼独自の技法が使われることでも知られています。しかし、昭和20年代後半からは生活様式の変化に伴い、大甕の製造に加えて日用品などの小物を多く作るようになったと、森 行雄さん(以下、行雄さん)は語ります。

「先先代の時代は、登り窯を年に13回も焚いていた時期もあったそうです。1回で1週間焚くわけだから結構な頻度ですよね。昔はそれほど大甕の需要があったというわけですが、一般家庭では段々と使用されなくなり、先代の時代からは日用品の製造が増えてきました。時流によって必要とされるものは変わってきますが、それが世の常というもの。世の中のニーズに合った、今までにないものを作りたいという作り手の心意気は、いつの時代も変わっていません」(行雄さん)

 

▲4代目当主・森 行雄さん

▲伝統的な製法で作られている大甕。一番大きなもので約900リットルの容量なのだとか。

海外からも注目。一括りにできない大谷焼の多彩な表情

所狭しと商品が並ぶ売り場へ足を運ぶと、様々な表情を持った陶器が出迎えてくれます。趣と重厚感のあるもの、目を惹く鮮やかなブルーのもの……。大谷焼と一言で括るのが難しいほど実に多種多様。その中には、5代目である森 崇史さん(以下、崇史さん)が作ったアニマル柄の食器などユニークな商品も。京都の芸術大学で陶芸を専攻し、卒業後は磁器を扱う作家さんの元で学んだ崇史さんは、伝統的な技術を基に大谷焼の新たな可能性を探るべく、新しい商品の開発を行なっているとのことです。

▲5代目である息子の崇史(たかし)さん

▲崇史さんの手掛けるアニマル柄シリーズ。手仕事のため全て微妙に柄が異なる世界に一つだけのカップです。

コーヒー碗皿 Giraffeシリーズ

思い出のエピソード

平成15年に伝統的工芸品指定を受けた大谷焼ですが、現在それを担う窯元は6軒のみ。森陶器をはじめ、各窯元ではそれぞれ、陶芸の体験教室を開催したり年二回催される陶器祭りに参加したりと、焼き物の魅力を伝えるための活動をしているそう。

「近年では海外メディアにも取り上げられ、はるばる外国から訪れてくれる方も増えてきました。海外の方は先入観なしで良いものは良いと言ってくれるし、作品をアートとして捉えてくれる方が多いですね。藍が有名な徳島では“ジャパンブルー”を推進していて、2020年のオリンピックに向けて盛り上げていこうという動きがあるんですが、そのおかげもあってか、ここ最近は特に藍色の商品が出ていますね。もちろん藍色の商品自体は以前から作っているんですが、便乗させて頂けるのであれば嬉しいです(笑)」(行雄さん)

▲大谷焼は日本が誇る伝統的なアートとして、様々な海外メディアでも紹介されているそう。

▲近年では藍色の商品が特に人気。

▲宇宙をイメージした鮮やかなブルー&紫の食器シリーズも。特に女性に人気なのだとか。

コーヒー碗皿 紫陽花色

用途は様々。自由な発想で使ってほしい

伝統工芸品を日用品として使うことに、多少なりとも敷居の高さを感じてしまう方もいるかもしれません。「よく使用用途を聞かれることがあるんですよ。『これは何に使う器ですか?』とか『何を飾ったら良いですか?』とか。焼き魚用や(阿波の名物)味噌焼き器など、敢えて用途を明確に打ち出した商品もありますが、基本的には自由に使って頂ければ良いものだと思っています。マグカップや徳利に花を飾ってもらっても構いませんし、そういう意味では海外から来た方のほうが、用途に囚われず自由に使って頂いている傾向が強いのかもしれませんね」と笑う崇史さん。前述の「海外の方は先入観なしで良いものは良いと言ってくれる」という行雄さんの話と重なりました。長い歴史と高度な技術が求められる伝統工芸品ですが、日常の中で使ってこそ価値や魅力が発揮されるというのも、また事実です。手頃な価格のもの、使い勝手の良いもの、プレゼントとして贈りたくなるもの……、多彩なラインナップの中にお気に入りが見つかったのなら、ぜひ気軽に手に取ってみてください。日常をちょっぴり豊かなものにするために、一役買ってくれるかもしれません。

番外編

▲看板犬のくるみちゃん♀

▲看板犬のくるみちゃん(♀)。森陶器のInstagram(https://www.instagram.com/otani_morigama)でも人気者です

▲くるみちゃんをモチーフにした可愛らしい商品も販売中。

大谷焼窯元 森陶器
公式サイト:https://morigama.jp/
住所:鳴門市大麻町大谷字井利ノ肩24
TEL:(088)689-0022
FAX:(088)689-0259
E-MAIL:info@morigama.jp

All Photos by Youichi UeDA

ライタープロフィール
濱安紹子(はまやす しょうこ)
猫と布団をこよなく愛する、三足の草鞋ライター。
音楽メディア、WEB系広告代理店での勤務を経てカナダ・トロントへ。 現地の日系出版社にてライター業に携わった末、帰国後よりフリーランスライターとしてのキャリアをスタート。その傍らで自身の音楽活動、酒好きが高じてバー営業も行っている。

カメラマンプロフィール
Youichi UeDA
「セガ・エンタープライゼス、ソニー・コンピュータエンタテインメントで 14 年間サウンドプログラマとして活動。現在は KKBOX でデータベースエンジニアとして勤務。本業の傍ら 2017 年より写心撮影の業務を開始。ダンスのワークショップを中心に鋭意活動中!」https://www.flickr.com/photos/youichi_ueda/

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